【もう一度自分の店を】Success Story02

この物語はバブルがはじけるずっと前から始まります。

独立したてのI-デザインにレストランの話が舞い込みました。
オーナーのTさんは名古屋の一流所で修行しているまだ三十才そこそこのやる気まんまんの青年である。
I-デザイナーも鼻息荒く突進していった。
打ち合わせのたびに店はどんどん大きく立派になっていった。
さいわいTさんは大地主の息子。
土地は十分あるし農協はなんぼでもお金は貸してくれる。
かくしてそれはそれは立派なレストランが完成した。
業界誌もカメラマン付きで取材に来てくれた。
さすがにプロのカメラマン。
びっくりするほどきれいに撮れてました。

開店の日はお客の長蛇の列。
大成功だった・・・。

しかししかし残念なことに店は2年ちょっとでつぶれてしまった。

思えばその流れは最初から始まっていたのだ。
開店の日はデザイナーも自慢顔で席に着いていた。
しかしやがて店の雰囲気のただならぬ様子に気付きはじめた、隣の席の二人はもう食べ終わろうとしているのに1人はまだ水だけだ。
後ろの席には間違ったオーダーが届くし。
「まだですか!」
おばさんの金きり声がひびく。
120席の店内はもうムチャクチャだ。
混乱は開店からしばらくつづいた

・・・・・・・ この店がどうしてつぶれたのかもう頭のいい読者はおわかりだと思います。
Tさんは腕はいいけど厨房のなかの職人でした。
もっと悪いことにI-デザイナーはまだまだただの駆けだしのデザイナーだったのです・・・

それから月日が流れ、2年前突然Tさんから電話がかかってきました。
感激の再会だった、I-デザイナーは相変わらず貧乏だけど、Tさんも貧乏になっていた。
ただ2人とももう充分に成長した大人だ。
すぐに内装費350万円の店創りが始まった。
今のデザイナーにとって350万円は充分の内装費だ。
使い方は熟知している。
Tさんも自分の店の売り物は何か、大切な店のオペレーションも研究しつくしていた。

ほんの短い間に25席カウンターだけのささやかなカレー屋さんがオープンした。
手作りのチラシをTさん夫婦といっしょに配り歩くデザイナーの姿はほんとーに楽しそうだった。

しばらくして味のいい評判の店としてTVやミニコミ誌に取り上げられた。
繁盛しているようだ。Tさんは大成功者とはいえないかも知れない。
しかし、もう一度自分の店を。
夢は間違いなくかなえた。

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